博士の学位取得を目指す方々へ (復刻版)
(注意:本サイトの内容を信じて学位が取れなくても、筆者は責任を負いません。自己責任の範囲内でご利用ください。ドクター生活は、要するに自分自身との戦いですから・・・)
1. はじめに
本ページは、筆者が阪大・機械工学専攻で博士の学位を取得した際、学位取得前のドタバタの中で得た経験をメモとしてまとめたものです。たいていは反面教師的な内容ですが、何かの参考になりましたら幸いです。
2. ドクターコースに進むにあたって
ドクターに適性があると思われる人の必要条件 (筆者の独断と偏見による):
- 研究者になりたい。
- 自分の力を試してみたい、とりあえず行けるところまで行ってみたい。
- 将来は何とかなるだろうと思っている。(←これは重要)
- 現時点で「絶対に行きたい企業」がない(どうしても行きたい企業があるなら、さっさとそちらを選ぶべき)。
ドクター進学を決めてしまえば、あとは修了要件をいかに3年間で満たすか (+自分の納得いく成果が出せるか) が当面の目標になります。阪大・機械工学専攻の修了要件は、所定の授業単位数を取得することに加えて、以下のような暗黙的な基準があったようです。
- D論に関連した論文について、採録決定済みの原著論文(英文 or 和文)が3本あれば問題なし。
- 採録決定済みの原著論文2本と、国際学会の講演論文(できればフルペーパ査読付)が2本程度でも何とかなるはず。←筆者はこのパターンでした。
- 採録決定済み論文が1本でも、投稿済み論文が1~2本あれば何とかなるかも?(このあたり、主査の先生のさじ加減による)
3. D論構想の立て方
断片的な成果を切り貼りするだけではD論にならないので、ストーリーをつくることが大切(ここが大変)。たぶんこれが、修論とは大きく異なる点だと思います。結局のところ、大変なのは最初(構想段階)と最後(まとめ段階)。
- 構想段階で考えること・・・D論の目的、新規に主張したいポイントは何か?なぜ、その手法を提案するのか?なぜ、そのアプローチを採ったのか?
- まとめ段階で考えること・・・最初に設定した目的に対して、結果として何が言えるのか、どこまでできたのか?何が課題として残されているのか?得られた結果から見えてくる著者のメッセージは?
ドクターの3ヶ年計画を立てるときの注意事項
- D2の終わりまでに一通りの成果を出しておかないと厳しい(D論の目次がだいたい書ける状態まで持っていく)。そうしないとD4の影が見えてくる。目安は、D2の終わりまでに原著論文を2本投稿、国際学会に2~3回投稿するくらい?
- D2の後半からD3の前半は、それまでに出した成果を対外的に発表(誌上発表、口頭発表)しつつ、ブラッシュアップしていくという作戦がいいような気がします。
- D3の後半に国際学会の予定を入れるべきではない(国際学会に参加すると、準備と参加で最低2週間はD論に関して何もできない)。筆者は、D論下見会1週間前に国際学会に参加したため死にかけました。
- 同様に、この時期に投稿論文の修正依頼がこないようにすることも大切。筆者は、投稿論文の修正期限がD論最終発表会の日程と完全に丸かぶりで死にかけました。でも、それって想定外にレビュワーの仕事が遅すぎたせいなんだけど(爆)
- 国際学会を多く入れすぎると、論文が書けない+研究が進まないので注意。まあ、海外に行けるのはドクターの特権ではありますが・・・。
【ご参考】ちなみに、筆者が経験したスケジュールは以下のとおりでした。
- 注1:D1の後半8ヶ月間は学会発表や出張を極力控えて、D論の構想・ストーリーづくりに費やしました。振り返ると、このあたりはきつい時期でした。あと、D3の後半6ヶ月もつらいです。個人的にもっとも楽しいと思えた期間は、成果が出始めたD2の中盤~D3の前半あたり。
- 注2:筆者の場合、D論以外の研究テーマを持っていた関係もあって国際学会に合計11回参加したため、投稿論文数が修了要件ギリギリでした(2本)。というのは仕事が遅い人の単なる言い訳ですけど:-)
- 注3:D論まとめ期間を4ヶ月半しか確保しなかったことは、実はスケジュール的に重大なミスでした(下記参照)。
4. D論提出&審査に特有の注意事項: あくまでも阪大・機械工学専攻の場合。大学によって固有の文化があるので注意
筆者が感じた注意点をいくつか書きます。
- 筆者の経験上、D論を書いていると色々と詰めの甘いところが出てくるので、下書きを書くために3~4ヶ月はかけるべきだと思います(2ヶ月で十分だと思った私はとても浅はかでした)。この失敗経験から導かれる結論として、専攻事務室に論文を提出する約半年前からD論執筆に取り掛かることを強くお勧めします。
- 大学院係に提出するD論の要旨はけっこう重要らしい。内容のみならず、誤字・脱字のチェックも慎重に。
- 事務に提出する書類には、(1)基本的に片面印刷、(2)提出日は記入しない、・・・など暗黙的な罠がいくつか仕掛けられているので要注意(といっても、よくわかんないからとりあえずで出してみるのが正解)。
- 簡易製本は、阪大の場合は機械系事務室横の印刷室でできる(東大本郷の場合は東大生協)。表紙の印刷は普通の印刷機(例えば、EPSONのOffirio)でできるが、原稿レイアウトの設定と手差しの力加減がむずい。
- 大阪大学生協で製本を発注すると、基本的には受け取りまでに中6日を要する。ただし、印刷を自前でやりくりして製本のみを発注すると、それよりも短く済む可能性あり。春卒業の場合は特に混雑するため、余計に納期が延びる可能性あり。
なお、筆者が経験したD論審査の流れは以下のとおりでした(すでに情報が古くなっているかもしれません・・・。必ずご自身で最新情報を確認してください)。
- D論の下書きを主査・副査の先生方に渡す
- 下見会
- 論文修正+スライド修正
- 修正版のD論を主査・副査の先生方に渡す
- 公聴会に代わる論文発表会
- 論文修正
- 大学院係に論文提出(簡易製本可、3冊)
- (論文修正)
- 機械系事務に論文提出(簡易製本不可、1冊)
- 機械系事務に提出した論文を回収
- 大学院係に論文提出(簡易製本不可、3冊)
【ご参考】筆者の場合(2007年秋入学、2010年9月修了) - この間の約2ヶ月半+D論下書き完成までの2ヶ月間(合計4ヶ月半)は、ドクター生活で(体力的に)最も大変でした。
- 下書きを渡す(5/28)
- 下見会(6/2)
- 公聴会に代わる論文発表会(7/1)
- 大学院係に論文提出(7/15)
- 機械系事務に論文提出(8/10)
- 大学院係に上製本3冊提出(8/19)
5. 参考情報: 辛くなったらこれを読め!